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「ふーん、やってみれば」
宣言した。
40代、文系、高卒、電気とは一切無縁の異業種サラリーマン。そんな自分が「第二種電気工事士を受ける」と決意を口にした夜のことだ。
妻の返答は3文字だった。
「ふーん、やってみれば」
期待していたわけじゃない。でも、もう少し何かあると思っていた。驚きでも、心配でも、笑いでもいい。3文字は、想定の中で一番こたえた。
翌日、職場の同僚に話した。
「っで、それは何に役立つの?」
返ってきたのは、共感でも応援でもなく、査定だった。「役立つかどうか」。まるで稟議書に判子を押すかのような一言。
週末、友人に話した。
「やってみればいいじゃん」
これは優しさだと思う。でも、どこか他人事だった。「止めはしないよ」という意味の「やってみれば」だ。
3人に話して、3通りの「やってみれば」をもらった。
この記事は、その3文字を燃料に変えた話だ。
なぜ40代サラリーマンが今さら電工2種なのか
正直に言う。最初のきっかけは「コスト削減」だった。
将来、ボロ戸建てを買ってリノベしたい。そのとき一番お金がかかるのが電気まわりだと知った。エアコンの取り付け、照明の交換、コンセントの増設。業者に頼むと1件数万円が飛ぶ。それを自分でできれば、利益率が変わる。
「だったら資格を取ればいい」
計算してみたら、資格取得にかかる費用は数万円。でもその後の人生で節約・稼働できる金額は、桁が違う。投資対効果として、これほど明確な答えが出たことは珍しかった。
でも、本当の理由はもう一つある。
「会社の肩書きは、会社がなくなれば消える」
40代になって、じわじわとそれが怖くなってきた。リストラ、倒産、業界の変化。何が起きても「電気工事ができる人間」というラベルは消えない。免状は一生残る。
守りながら攻める。その両方を一枚の資格で実現できると気づいたとき、受験を決めた。
「役立つの?」に、今なら答えられる
同僚の「っで、それは何に役立つの?」は、正直、刺さった。
一瞬、言葉に詰まった。「将来のリノベに…」「副業に…」「万が一のために…」。頭の中に答えはあるのに、うまく言語化できなかった。
あの日の自分に、今なら3つの答えを渡せる。
① リノベのコストを自分でコントロールできる 業者依存から脱却できる。電気まわりを自分で判断できる人間とそうでない人間では、不動産投資の収支が変わってくる。
② 「やれる人間」というブランドになる 資格は信用だ。「電気もできる」という事実は、将来的にコミュニティや人脈の中での立ち位置を変える。
③ 子供に背中を見せられる これが一番大きいかもしれない。「パパは40代から国家資格を取った」という事実は、どんな言葉より重い。
「ふーん」が一番のエネルギーだった
妻の「ふーん」は、今思えば最高の言葉だった。
反対されていたら、戦う相手ができていた。応援されていたら、期待に応えようとしていた。でも「ふーん」は、何もなかった。
何もない空白が、一番自分を自由にした。
誰かのためじゃない。誰かに証明するためでもない。自分が決めたから、やる。 それだけの動機が、静かに育った。
結果、今どこにいるか
宣言から数ヶ月が経った。
学科試験は突破した。今は実技の練習中だ。4色のボールペンで複線図を描き、ケーブルを剥き、リングスリーブを圧着している。
妻はまだ「ふーん」のまま進捗を聞いてこない。
でも、テーブルに工具を広げていると、子供が覗きに来る。「パパ何やってるの?」と聞いてくる。
その問いに「電気の勉強だよ」と答えながら、少しだけ誇らしい気持ちになっている自分がいる。
「ふーん」から始まった話が、ここまで来た。
次回は、学科試験をゲームとアプリだけでハックした話を書く。参考書は最後までほぼ開かなかった。
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